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添い人

 

=添い人=

色あせる事を知らない蒼穹。
無限に広がる緑の大地。
そして、大地を貫く一筋の白い道。
私はその道を永遠と歩いていた。

いつからこの世界にいるのか、
いつからこの道を歩き始めたのかは憶えていない。
ただ、私の最古の記憶には、この白い道を歩む自分の
姿がすでに刻み込まれていた。

なぜ私がこんな世界でこの道を歩み続けているのかは
わからない。ただ、口では言い表せない何かが、
私に歩むことを強制していた。
いや、むしろ歩まなければならないという根拠の無い
使命感かなにかが私の体を動かしていると言った方が
いいかも知れない。

幾ら歩みを進めても変わらない風景。
変化があるとすれば、空気の流れと雲の形、
あとは添い人の表情ぐらいだろうか。

翼を持った彼女、添い人は常に私の側に居てくれた。
ちょっと気が違えば狂ってしまいそうなほど
無表情なこの世界の中で、彼女の存在は唯一の心の支えであった。
彼女は、私がこの世界に訪れたときにはすでに
そばに付いていてくれたという。
この世界で、私は彼女以外の者を目にしたことは無い。


私は時々彼女に尋ねる。
「私は一体何のためにここにいるのか。
 また、君は何のために私のそばに居てくれているのか?」
と。

そうすると彼女からはいつも同じ答えが返ってきた。
「この永遠と思える道程もやがては終わりをむかえます。
 そして、その道程の果てを目にしたとき、あなたは約束を
 果たしたことになります。
 それと同時に、わたしも役目を終えることになります。」
...と。
約束とは何なのか、また彼女の役目とは何なのかという
質問に対しては、いつも口を閉ざしたままだった。

とりあえず、この道の果てに答えが存在する。
自分の求める答えを得るにはとにかくこの道を歩むしかなかった。

道の果てまであとどれくらいあるのだろうか。
見える範囲だけでも気が遠くなりそうな程の長い道。
更にその先はどれだけ続いているのだろうか...。
私が失望感を漂わせる表情をしていると、彼女は私の前にスッと立ち、
勇気づけるようにそっと笑みを浮かべて見せた。
そんな時、私は「この微笑みさえあれば、この道を永遠に
歩み続けるのも悪くないかな...。」などと思ったりしてみた。


おわりんこ



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